糖尿病と糖尿病網膜症(2025.11/5)NEWS
日本の眼科6月号は「糖尿病の今」という特集でした。糖尿病の治療は飛躍的な進歩をとげ、合併症を起こす人も減り、きちんとコントロールと治療を続ければ、健常な方と同じに生活できます。糖尿病の学び直しもこめて、この内容をご紹介します。
1) 糖尿病とは
私たちの身体はブドウ糖を消費して動いています。血液の中のブドウ糖の濃度は100mg/dl付近にコントロールされます。膵臓から分泌されるインスリンというホルモンにより、この値に保たれています。
糖尿病はインスリンの量が不足したり、インスリンの効き目が落ちたりして、血糖値が上昇して起きる病気です。これをインスリン分泌低下とインスリン抵抗性といいます。
①インスリン分泌低下:膵臓の機能低下により十分なインスリンを作れなくなってしまう状態
②インスリン抵抗性:インスリンの量は十分だが、効果が発揮できない状態。
糖尿病は原因により「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分類されます。
①1型糖尿病:自己免疫の異常などにより、膵臓のβ細胞が破壊されインスリンが分泌されなくなります。この場合は、インスリンの注射が必要になります。
②2型糖尿病:遺伝、運動不足、肥満などが要因で、インスリン分泌低下や抵抗性が起こります。生活習慣の改善、血糖降下薬の内服、インスリン注射などが必要です。
2)患者数
コロナ禍で患者さんの受診抑制があったため、旧いデータになりますが、2016年には約1000万人の推計結果です。
2023年の治療中の患者数は552万人、男性が約317万人、女性が約234万人です。
3)症状と検査
症状がなく気付かない方もいますが、自覚症状は、喉が渇く、尿の回数が増える、体重減少、疲れやすい などです。
会社や自治体の健康診断で高血糖を指摘されて、診断がつく方が多いです。
それでは、糖尿病の診断基準をみましょう。
糖尿病の診断基準は
空腹時血糖値が126mg/dl以上
75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dl以上
のどちらかにあてはまる場合
またヘモグロビンA1cが6.5%以上も糖尿病と診断されます。
ここで耳慣れない言葉、75g経口ブドウ糖負荷試験とヘモグロビンA1cを解説します。
①75g経口ブドウ糖負荷試験:75gのブドウ糖液を飲んだ後、30分後、1時間後、2時間後に血糖値を調べる検査です。私は飲んだことはないのですが、患者さんに聞いたところ、サイダーのような味とのことでした。
②ヘモグロビンA1c:過去1-2か月の血糖値の平均を反映する指標です。赤血球のヘモグロビンにどれくらいのブドウ糖が結合しているかの割合(%)で、正常値は5.9%以下、6.5%以上は糖尿病の診断、その間が境界型になります。
4)治療
生活習慣の改善、適度な運動療法、食事療法、そして治療薬になります。
治療薬は経口血糖降下薬とインスリン注射です。
私は門外漢なので、このコラムで治療薬について書くことは、ご容赦ください。
糖尿病の治療薬は、この20年で飛躍的な進歩をとげています。私が医学部を卒業した頃は治療薬は数種しかありませんでしたが、今は多種多様な薬があります。
このコラムを書くにあたって、糖尿病情報センターのホームページの「糖尿病診療ガイドライン2024」を読んで勉強しました。これは一般の方も、糖尿病情報センターのホームページから読むことができます。医学教育を受けたことが無い方でも参考になります。量が多くて尻込みするかもしれませんが、お勧めします。
糖尿病と診断され不安を抱えた方は、知りたい部分だけでも読んでみてはいかがでしょうか。
今回は糖尿病のみでかなりの量になりました。糖尿病の合併症と糖尿病網膜症は来月に紹介します。
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