96.緑内障治療薬
緑内障にはいろいろなタイプがあることをお話ししましたが、治療方針は一つ、眼圧を下げることです。眼圧を1mmHg下げれば、進行を約10%遅らせることができます。治療は、まず点眼薬での眼圧下降、それでも視野が進行する場合は手術になります。
今回は緑内障点眼薬についてお話しします。
眼圧を下げるには、2つの方法があります。眼圧上昇の原因になる房水の産生を抑えるものと、房水が眼外に排出するのを促進するもの、この2つです。たとえで言えば、水道の蛇口を絞るか、下水の排出を増やすかです。
まず1種類の点眼から始めますが、十分な眼圧下降効果が得られない時は、違う作用機序の点眼を追加し、効果を見ていきます。
現在、使用されている点眼剤は5種類あります。プロスタグランジン関連薬、交感神経β遮断薬、点眼用炭酸脱水酵素阻害薬、交感神経α2刺激薬、ROCK阻害薬です。それぞれに、見ていきましょう。
1) プロスタグランジン関連薬
現在、使用頻度の一番高い点眼薬です。房水の排出を促進します。房水の排出路には2通りあり、繊維柱帯という部分を通り排出する経路、ぶどう膜強膜を通り排出経路がありますが、この薬はぶどう膜強膜排出路からの房水排出を促進する作用があります。1剤で眼圧下降の効果が高いのが利点です。副作用は、充血、瞼の皮膚が黒ずむ、まつ毛が伸びるといったものです。これらの副作用は使用を止めれば元に戻ります。
キサラタン(一般名;ラタノプロスト)、トラバタンズ、タプロス、ルミガンといった薬です。
2) 交感神経β遮断薬
この薬剤は、毛様体の房水の産生を抑え、眼圧を下げます。眼圧下降効果の高い薬ですが、喘息や閉塞性呼吸器疾患、除脈の人には使えませんので注意が必要です。
チモプトール(一般名;チモロール)、ミケラン(一般名:カルテオロール)といった薬です。
3) 点眼用炭酸脱水酵素阻害薬
この薬も房水の産生を抑えます。以前は内服薬で用いていたのですが、点眼薬が開発されました。副作用が少ないことが特徴です。トルソプト、エイゾプトといった薬です。
4) 交感神経α2刺激薬
房水の産生を抑え、眼圧を下げます。副作用が少ないとともに、視神経の保護作用が期待されている薬です。アイファガンという薬です。5) ROCK阻害薬
繊維柱帯を広げ、房水の排出を促進して、眼圧を下げます。グラナテックという薬です。グラナテックは点眼した直後から約1時間、ほとんどの人が充血します。ただ、1時間を過ぎた頃には充血はなくなります。使う時は、患者さんに十分このことを説明します。
6) 合剤
1剤で眼圧が十分下がればよいのですが、2剤、3剤と必要になる患者さんもいます。点眼はなるべく種類を少なく、そして点眼回数が少なくするのが、患者さんの負担を減らします。製薬会社は従来の点眼を改良し、交感神経β遮断薬は1日2回点眼だったものが1回ですむようになりました。さらに点眼の種類・回数を減らすため、2種類の点眼薬を1つにした合剤の開発が進んでいます。
現在、市場に出ているものはプロスタグランジン関連薬と交感神経β遮断薬を一つにした点眼薬(ザラカム、ミケルナ、タプコム、デュオトラバ)、交感神経β遮断薬と点眼用炭酸脱水酵素阻害薬を一つのした点眼薬(コソプト、アゾルガ)です。
緑内障点眼薬は長期に使うものなので、これからも開発、改良が続けられると思います。
2017/12/6更新