93.白内障手術
白内障手術は日々、進歩をとげています。器械、術中に使う薬剤や器具、そして眼内レンズの進歩とバリエーションは大きなものがあります。今回は、白内障手術についてお話しします。
1) 手術をすすめる時期
白内障は40歳を過ぎた頃から出てくる加齢変化です。本人に不自由がなければ、手術を急ぐ必要はありません。視力が低下した、本人が不自由を感じる、この場合、手術を考えます。
2) 手術の前に知っておきたいこと
まず麻酔の話をします。通常、目薬の局所麻酔で行います。顕微鏡下のとても細かい手術なので、安静を保てない方は、全身麻酔になることもありますが、まれなケースです。
次に質問があるのが「入院が必要ですか?」。現在は日帰り手術が一般になっていますが、心配な持病をお持ちの方は一泊入院を希望するのも安心です。
3) 手術の流れ
白内障の手術は2つの手順からなります。まず、濁った水晶体を超音波の機械で削って吸引します。次に、人工の眼内レンズを水晶体のあった場所に入れて終了です。
手術前には眼内レンズの度数を決めるための検査をします。強い近視の方は夢のような話ですが、術後の近視を軽くすることができます。また、強い遠視の方も同じように遠視を軽くすることができます。
4) 眼内レンズとはどんなもの?
水晶体はカメラのレンズの役割でピント合わせをしてくれます。水晶体を取ってしまうとピント合わせのレンズもなくなってしまいます。水晶体の代わりに眼内レンズを入れます。
眼内レンズは一度手術をしたら一生、目のなかにいれたままです。そのためには、何十年も目の中にあってトラブルのないものでなくてはなりません。眼内レンズ開発のきっかけは、第二次世界大戦にさかのぼります。イギリス軍の戦闘機が弾を受け操縦席の窓が割れて破片がパイロットの目のなかに入ってしまいましたが、幸い感染を起こさずその後も目の中にあってもトラブルが起きなかったのです。PMMAという合成樹脂ですが、ここから眼内レンズが生まれました。
4) 眼内レンズの進歩
かつて眼内レンズは単焦点、つまりどこか1点しかピントが合わないものでした。患者さんと相談して、遠くが見えるようにして近くは老眼鏡をかけてもらう、または近くが見えるようにして遠くは眼鏡をかけてもらう、どちらかを選んでもらいました。今も基本は同じですが、乱視矯正、さらには遠近両用レンズとオプションが増えました。ただし、白内障の手術は健康保険を使って受けることができますが、遠近両用レンズは自費になるので、手術を受ける施設で良く相談して、どのレンズを入れるかを決めてください。
①乱視矯正の眼内レンズ
トーリック眼内レンズといい、2009年より日本でも保険適応の手術を受けられるようになりました。白内障の手術と一緒に乱視も直せる時代になりましたが、すべての乱視に万能なものではないようです。執刀医とよく相談して決めてください。
②多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズは遠くも近くも見える遠近両用レンズです。老眼に悩む方にはまさに夢のようなレンズですね。2008年に先進医療として認められました。
理論は難しいのですが、目に入ってくる光を遠くと近くに配分し、遠く・近くの二か所に焦点が合うように設計されています。
しかし、これも若い頃の見え方を再現するまでにはいかず、術前の期待が大きすぎると期待にそえないこともあるようです。特に自費になりますので、こちらも執刀医とよく相談してください。
眼内レンズの進歩は目覚ましく、私が手術を必要とする頃にはもっと良いレンズが開発されているのではと期待しています。
2017/9/6更新