85.糖尿病の三大合併症
糖尿病シリーズもまとめで、三大合併症についてお話しします。網膜症、腎症、神経症です。糖尿病は血糖値の高い血液が血管内を流れるため、末梢の小さい毛細血管が詰まり障害を受けます。そのため、毛細血管から栄養を受ける網膜、腎臓、末梢神経が障害を受けます。
1) 糖尿病網膜症
網膜の毛細血管が詰まり、その結果、酸素不足を補おうとして新生血管が生まれます。この新生血管がとても破けやすく、出血、浮腫を起こし視力低下を引き起こします。詳しくは前回、前々回のコラムをお読みください。
2) 糖尿病腎症
腎臓は糸球体と呼ばれる毛細血管の集まりです。体中を巡って老廃物が集められ糸球体かでろ過されて尿になって体外に放出されます。この糸球体が詰まって老廃物がうまく排出されない、尿が出なくなるのが腎症です。
腎症は高血圧や高脂血症がると進みやすいので、血圧の管理、血糖値だけではなく、食塩、タンパク質、脂質の取り過ぎにも注意が必要です。
腎症の程度は、尿中アルブミン値や血中クレアチニン値で調べます。アルブミンは人の体に大切なものなので、腎臓で再吸収されますが、この機能が落ちると尿中にアルブミンが排出されてしまいます。逆にクレアチニンは老廃物なので、本来は尿中に排出されますが、腎機能が落ちると血中のクレアチニン値が上昇します。
腎症が悪化すると、老廃物・水分は排出されないため体のむくみがでます。最終的には人工透析が必要になります。
糖尿病腎症で人工透析を受けている人は約10万人、透析を受けている人の原因の一位、約44%です。
3) 糖尿病神経症
血糖値が高い状態が続くと、体内の余分なブドウ糖によりソルビトールという物質が作られ神経細胞を障害します。さらに細い神経(末梢神経)を栄養する血管が障害を受けます。
①多発性神経障害
身体のもっとも末端、手足から現れます。感覚がマヒしたため、低温やけどに気が付かない、足先がピリピリと痛むなど多彩な症状です。
②自律神経障害
自律神経は内臓の働きや体の体温調節に働きます。この働きが落ちてくると、下痢や便秘、突然、汗をかくあるいは体温が上がっているのに汗が出ないなど多彩な症状でます。
③進行するとどんな問題がおこりますか?
神経麻痺が進むと感覚が鈍くなるので、けがややけどに気づきにくくなります。糖尿病の進行した人のけがの治りが遅い原因の一つです。
自律神経障害のため、消化活動が一定せず、高血糖と低血糖を繰り返し血糖コントロールが難しくなります。
今回は怖いことばかりを書きましたが、まさに「糖尿病は万病のもと」なのです。でも、過剰に恐怖を感じることはありません。私の患者さんでも、糖尿病とうまく付き合い90歳を超えても元気で合併症をださずに暮らしている人がいます。食事療法、血糖降下剤やインスリン注射、適度な運動(筋力の維持は実はとても大切です)、血圧の管理を続ければ、健康な生活を過ごせます。血糖コントロールは忍耐が必要ですが、どうぞ合併症を出さないように治療を続けていただきたいと願っています。
2017/1/11更新