84.糖尿病黄斑症
先月は、糖尿病網膜症について書きました。今月は糖尿病網膜症の中で、特に視力に影響する「糖尿病黄斑症」をお話しします。
1) 視力に一番大切な「黄斑」
私たちは、目に入ってきた光、情報を網膜にある視細胞で感じ取り、脳に伝えて物を見ています。この視細胞が一番密集して、物を見る中心的な役割をしているのが、網膜の「黄斑」という場所です。
2) 黄斑が傷つく「黄斑症」
黄斑がいたみ視力が低下する病気を「黄斑症」と総称します。原因はさまざまで、加齢黄斑変性症、強度近視による黄斑症などがありますが、糖尿病網膜症のなかでも黄斑に出血や浮腫をおこしたものは糖尿病黄斑症といい、視力低下につながります。右の写真でやや暗く見える黄斑部の近くに出血があるのがわかります。
3) 単純網膜症でも起こることがあります
前回、糖尿病網膜症の分類を、単純性、前増殖性、増殖性に分けてお話ししました。単純性の網膜症は、原則として経過観察でよいのですが、黄斑症は単純性の患者さんにも起こることがあります。これが黄斑症の怖さです。視力低下につながるので、黄斑症が出た場合は、単純性でも治療が必要になります。
4) どんな症状がでますか?
5) 治療は?
①レーザー光凝固術
蛍光眼底造影検査を行い、血管から水分が漏れ出している場所や、毛細血管瘤を特定し、そこをレーザー光で凝固する治療です。血管からの漏れ出しが止まれば浮腫がなくなり視力が改善します。
②ステロイドの注射
トリアムシノロンというステロイド薬を眼内や眼球の後方に注射する治療です。血管や網膜の炎症を抑え浮腫が軽減します。
③血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の眼球内への注射
血管内皮増殖因子は眼内の血管新生や血管からの血液成分の漏れ出しを促進します。この数年、黄斑症の治療に血管内皮増殖因子阻害薬の眼内注射が用いられるようになりました。この薬は糖尿病黄斑症だけではなく加齢黄斑変性症にも広く用いられています。
糖尿病黄斑症について書いてきましたが、大切なことは定期的な眼底検査です。自覚症状が全くなくても、糖尿病の方は、一年に一回は眼底検査を受けましょう。
2016/12/7更新