75.なみだ目
前回はドライアイの話をしました。今回は、流涙症(りゅうるいしょう)=なみだ目 の話をします。右の図を見てください。涙はまぶたにある涙腺で作られ、目の表面に分泌されます。涙は目を乾燥から守り、感染からも守ってくれます。また、異物が入った時は洗い流してくれます。
余った涙は目頭の上下にある涙点から涙小管を通り、涙嚢(るいのう)という部分に貯められ、鼻涙管を通り鼻に排出されます。涙点は排水口、涙嚢は下水を貯留するプールで一連の下水の役目をはたしていると考えてください。
この排水の機能が落ちると「涙があふれて辛い」というなみだ目の症状をおこします。
1) 原因は?
これはたくさんあり、複数の原因が重なり合っておきます。これが治療の難しさになります。順番にあげていきましょう。
まず結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)です。年齢とともに私達のお肌のはりがなくなるように、結膜もしわがよってきます。結膜がでこぼこの床になったようなもので、涙の水はけが悪くなります。私も左目の結膜弛緩症があり、左目はなみだ目で辛い思いをしています。
次に、涙小管、鼻涙管が詰まる、細くなることです。これを鼻涙管閉塞、鼻涙管狭窄と呼びます。
まばたきの力が弱くなることも原因の一つです。まばたきは涙を涙点に送るポンプ作用です。
2) 治療はどうしたらよいでしょうか?
なみだ目は、視力の低下がないため、長年、治療の研究がすすんでいませんでした。けれど患者さんにとってはとても辛く、生活の質を落とすものです。最近は治療法が開発されています。まず、原因がどこにあるのかを見極めることが大切です。
結膜弛緩症ならば、しわ伸ばしではありませんが、しわのよった結膜を引き延ばして縫い縮める結膜縫縮術を行います。
涙小管、鼻涙管の狭窄、閉塞がある場合は、シリコンチューブ留置術を行います。上下の涙点からシリコンのチューブを入れて2-3か月留置して管を広げる方法です。
ただ、なみだ目は複数の原因が重なっている場合が多く、一つ一つ原因を取り除いていくことになります。
2016/3/2更新