72.色覚異常
人の網膜には色を識別する能力があり、網膜の錐体という細胞が働きます。赤、緑、青は色の3原色で、錐体には赤、緑、青の感覚を担当する3錐体があります。それぞれの刺激が大脳の色覚の中枢で統合され、私たちは色を識別しているのです。
1)色覚異常
先天的なもの、後天的なものがありますが、今回は先天的なものを話します。錐体には赤錐体、緑錐体、青錐体の3つがあり、それぞれ色を感じる「視色素」を持っています。この3種類の色素が欠損するか、働きが不十分な場合、色の判別がしづらくなります。これが「色覚異常」です。
2) 色覚異常のタイプ
先天性の色覚異常のほとんどは第1色覚異常(赤を感じる錐体が欠損もしくは働きが不十分なもの)、第2色覚異常(緑を感じる錐体が欠損もしくは働きが不十分なもの)の2つのタイプです。どんな色を間違えやすいかを示します。色の環を作った時、対極にある色の差が小さく感じられ色の識別がむずかしくなるようです。患者さんから聞いた話では「緑の垣根に赤い花が咲いているといわれるが区別がつかない」「友人と焼肉を食べに行ったが生と焼けた色の違いがわからない」といった訴えがありました。
3)原因は?
X染色体劣性遺伝です。性染色体は男性はXY、女性はXXです。男性はX染色体に色覚異常の因子が乗っていれば色覚異常になります。女性はX染色体2本のうち一方が正常なら保因者にはなりますが、色覚は正常です。そのため日本人男性の約5%に色覚異常がいますが、女性はその1/10以下です。4)どのような検査でわかります?
小学校4年生の時に、色覚検査を受けた記憶のある方がいらっしゃると思います。2003年から小学校での色覚検査が廃止されました。ご自身もしくはお子さんが色覚異常ではないかと疑われる時は、学校で検査を受けたいと申し出るか、眼科で検査を受けていただくことになります。
まずスクリーニング検査として「石原式色覚表」があります。右の写真のように紛らわしい色の中に数字がひそんでいますね。この検査は色覚異常があるかないかを調べる検査で、まだこれでは第1色覚異常か第2色覚異常かは判別できません。
石原式色覚表で異常が疑われる時は、次に「パネルD-15検査」を行います。グラディエーションのある15個のパネルを順に並べてもらいます。これで第1、第2の判別ができます。
色覚異常はわかっても治療法がないために検査が行われなくなってしまったのですが、大人になって希望していた職業につけないこともあるので、不安のあるかたは検査を受けておくとよいと考えますが、治療法がないので、とてもデリケートで難しい問題です。
5)治療法はありますか?職業に制限はありますか?
残念ながら治療法はありません。大切なのは、周囲が誤解を持たないことです。全く色のない世界ではなく、識別しづらい色の組み合わせがあるということです。明るいところで確認する、周囲の人にアドバイスを受けるなど良いでしょう。普通自動車第1種の免許も取れますし、ほとんどの職業に問題はありませんが、制約を受けるものもあります。航空機乗務員や海上保安の職業は色覚が正常であることが求められています。
2015/12/2更新