62.網膜静脈分枝閉塞症
今月から網膜の病気とその治療法をご紹介します。今回は、網膜静脈分枝閉塞症(もうまくじょうみゃくぶんしへいそくしょう)です。舌をかみそうな病名ですね。網膜の静脈の分枝が閉塞=つまってしまう、という病気で、眼底出血を起こします。
動脈は酸素や栄養に富んだ血液を体の各部位に送ります。静脈は、二酸化炭素や老廃物を受け取り心臓に血液を戻します。私は、患者さんに説明するとき、たとえで、動脈は水道、静脈は下水と考えてくださいと言います。下水が詰まったらどうなるでしょうか。下水があふれ出ます。網膜の静脈の細い枝が詰まると、そこから血液があふれ出で眼底出血を起こします。
1) 原因
動脈硬化が一番の原因です。動脈と静脈の交叉した部位で硬くなった動脈に静脈が押しつぶされて詰まります。また、小さな血栓(血の塊)で詰まることもあります。血管は加齢とともに硬くなり、動脈硬化が進むので、年齢とともにリスクが高くなります。
2) 症状

逆に、出血部位が小さく、黄斑部にかからない場合は、自覚症状はなく、検診で見つかる方もいます。
3) 治療

出血が黄斑部にかかり視力低下が大きい患者さんは、治療の対象となります。治療法は、以前はレーザー治療が主体でしたが、この数年で大きく変わりました。血管内皮細胞増殖因子(VEGFと呼びます)を抑える薬を眼内に注射する方法です。抗VEGF療法と呼びます。これは本当に画期的なもので、今まで治すことができなかった加齢黄斑変性症の治療にも使われています。写真を見てください。治療後の眼底写真で、出血がきれいに治って視力も1.2に戻りました。
4) 全身との関連
網膜静脈分枝閉塞症が見つかった患者さんで内科の主治医のいない方には、私は必ず内科を受診してくださるようお願いします。何人かの患者さんで、糖尿病が見つかり早く治療を開始することができました。動脈硬化は高血圧や糖尿病が悪化因子です。全身の病気を知らせてくれる危険信号でもあるのです。2015/3/11 更新