55. 目に何か入った時の、応急処置
1) 怖いのはアルカリ性
酸性のものはタンパク質に触れた瞬間に、タンパク質を凝固させます。角膜上で、その凝固した組織そのものがバリアーとして働いてくれます。また、酸は組織を通過する力が弱いので、角膜の深くまでは届きません。角膜障害を起こしても比較的軽症で済みます。一方、怖いのはアルカリ性のものです。アルカリ性の物質は、組織タンパク質を溶かし、角膜に障害を与え、孔が開く(穿孔といいます)こともあります。
身近にあるアルカリ性のものは、キッチンハイターなどの漂白剤です。校庭に白線を引く消石灰もそうです。
2)応急処置 まず、洗う
まず、水道水で洗い、希釈することが第一です。目に入ったものが何であれ、まず希釈することが何よりも大切で、その場で行ってください。眼科を受診するのはそれからです。そうでないと、大切な初期対応の時間を失ってしまいます。漂白剤の注意書きには「目に入った場合は、直ちに流水で15分以上洗眼し、その後、眼科を受診すること」と書かれています。
ここで気を付けてほしいのは、水道をひねり、水を手のひらに取って目にパシャパシャとかける程度では、洗眼にはならないということです。家庭で一番簡単にできる方法は、シャワーを弱い水流にして目を洗う、もしくは洗面器に水を溜め流しながら洗います。また、子供の場合は、コップに何杯も水を用意し、横に寝かせ目のわきにタオルを当てて、どんどん水をかけて洗うのもよいでしょう。私は、医院ではこの方法で洗眼をしますが、大胆に洗眼するので患者さんや家族に驚かれます。しかし、これくらいでないと、効果がないのです。
3)入ったものを持って眼科を受診する
家や現場での、緊急の洗眼が終わったら、眼科を受診しますが、その際は、入ったものの容器を持参してください。中性、酸性のものはあまり心配はありませんが、アルカリ性のものでは、さらに洗眼をします。4)治療
角膜上皮の障害が軽い場合は、抗生物質の点眼、ヒアルロン酸点眼で様子をみます。アルカリ性の場合は時間とともに角膜の障害が重症化する場合があるので、慎重な経過観察が必要です。
5)最後に・・・予防と応急処置
予防は一番効果があります。私は、漂白剤を使うときは、家にあるパソコン用のメガネをかけて万が一に備えます。何でもよいですから、メガネをかけて予防するのが一番です。そして最後に、受傷後にしっかり洗眼したかが、その後の回復に大きくかかわります。痛くても、大急ぎでしっかり洗眼をしてください。川崎市多摩区 ふじえ眼科 院長 藤江敬子 プロフィールはこちら
2014/8/15 更新