38. 遠近両用コンタクトレンズ体験記
1) 老眼のおさらい
コラムNo.9を見てください。水晶体が加齢とともに弾力性を失い、近くを見る時に十分膨らまなくなります。近くのピントが合わず、凸レンズの老眼鏡のお世話になります。2) 遠近両用コンタクトレンズの歴史
老眼は誰でも40歳を過ぎた頃から、避けて通れないものです。若い頃からコンタクトレンズを使用していた人が老眼年齢になり手元が見えなくなりました。この場合、コンタクトレンズをした上で、近くだけ老眼鏡をかけてもらえば、近くの字も読むことができます。でも、コンタクトレンズで遠くも近くも見えたらどんなに良いだろう、そのようなニーズから15年程前、各メーカーが両用のコンタクトレンズを開発し、発売しました。3) 私の失敗談
私は現在50歳代半ばですが、実は40代始めに、遠近両用コンタクトレンズに挑戦したことがありました。原理は、遠近両用メガネと同じで、1枚のレンズの中に、遠くにピントを合わせた部位、プラスを加入して近くにピントを合わせた部位が混在し、遠く、近くを視線をずらすことで使い分けます。結果は失敗でした。近くは見えるのですが、遠くを上手に見ることができません。あきらめて、メガネの生活にしました。4) 50代の再チャレンジ
その後、各メーカーは改良を重ね、最近は1日使い捨てタイプの両用レンズも発売されました。今回、私が再チャレンジしたのは某メーカーの1日使い捨てタイプです。このレンズは初期老視用に加入度数が+0.75のもの、もう少し老視が進んだ人のための+1.50の2種類があります。レンズの中央が遠くを見る度数、周辺が近くを見る度数になっています。私は両眼とも-1.50の近視なので、遠くは少し弱めに-1.00、加入度数+1.50をつけてみました。結果は、失敗でした。遠くも近くも見えるのですが、まるで水中にいるような浮遊感で気分が悪くなりました。
次回は遠くは同じ-1.00、近くは加入度数を下げて+0.75をつけました。今度は成功です。遠くも近くも弱めに設定しているので、どちらも中途半端な見え方ですが、そこそこ見えて満足のいくものでした。
5) 妥協が必要ですが、使い道はあります
私は、遠近両用コンタクトレンズを希望する方には、「これは妥協の産物です」と念を押します。遠くも近くも見えるようになるのは、若返りしかなく、これは不可能です。私が今、使用しているものも、遠くは0.8くらいしか見えません。近くも単行本を読もうとしたら、とても遠くに持って行くはめになり諦めました。けれど小さい字でなければ読むことはできます。レストランのメニューもよほど小さい字でなければ可能です。女性なら同窓会や結婚式、パーティーの席に、その時だけ使ってみてはいかがでしょうか。男性でニーズがあるのはゴルフです。ただ、私はこのレンズで車の運転をしようとは思いません。やはり見え方がメガネにくらべ不安定なのです。
そして最後に一つ。どんなメーカーのレンズを試してみても安定した視力の得られない方がいます。そうした方は、このレンズは縁がないとあきらめてください。
川崎市多摩区 ふじえ眼科 院長 藤江敬子 プロフィールはこちら
2013/3/22 更新