23. 涙の話し
1) 涙はいつも目を守るために働いています
涙は上まぶたの裏側にある涙腺で作られ、目の表面に分泌されています。基礎分泌と反射分泌があり、目を乾燥から守るために常に分泌されているのが基礎分泌、ゴミが入って痛いとき出てくる涙は反射分泌です。涙は塩辛いですね。0.9%の食塩水に相当し、弱アルカリ性です。なんと一日に1.5mlくらいしか分泌されません。この涙を有効活用するために、いろいろな工夫があるのです。
2) 涙の工夫
涙は目の表面(角膜、結膜)を覆い、目を守るバリアとして働きます。涙は3層に分かれます。一番表面にある「油層」、次の「水層」、角膜・結膜と接触している「ムチン層」です。それでは順番に働きを見ていきましょう。
油層は上下のまぶたの縁にある分泌腺から分泌された油でできています。涙が蒸発するのを防ぎ、少ない涙が有効に使われるように働きます。
水層は、涙の多くを占める涙液層です。涙液は上まぶたの裏側にある涙腺で作られ、目の表面を潤します。乾燥から守るだけではなく、涙液にはいろいろな免疫物質が含まれ目を感染症から守ってくれるのです。
ムチン層は、角膜や結膜から分泌される物質で、角膜・結膜と涙液の接着剤の役目を果たします。
3) 涙の道
涙は涙腺で作られ、目の表面に分泌され、一部は大気中に蒸発し、残った涙は鼻涙管という下水道にあたる管を通って鼻に流れていきます。水道と下水の関係です。この水道と下水の関係がうまくいかないと、不愉快な症状がでます。涙の量が減ったり、蒸発が増えたりすると目が乾く「ドライアイ」の症状がでます。
下水にあたる鼻涙管がつまると、涙があふれてハンカチが手放せない「流涙症」の症状がでます。
それぞれの症状については、次回にお話しします。
こぼれ話し
涙にまつわる美しく悲しいお話です。
ギリシャ神話にパエトンという少年が登場します。太陽神アポロンの息子です。彼は父と離れ地上で暮らしていましたが、ある日、父を訪ね太陽の宮殿に出かけて行きました。アポロンはとても喜び、息子に何か望みをかなえてやると約束します。パエトンは、アポロンの太陽の馬車を御したいと願いました。これを聞いたアポロンは後悔しました。太陽の馬車を御すのはとても難しいのです。けれどパエトンの願いは変わりません。アポロンはしかたなくパエトンに太陽の馬車を貸しましたが、やはり馬達はパエトンを言うことを聞かず暴走します。馬車が地面近くを走ると大火事が起こりました。
全能の神ゼウスは、馬車に雷を落とし馬車の暴走を止めました。馬車は燃えながら川に落ち、パエトンは命を落とします。パエトンのお姉さんは弟の死を悲しみ、その川岸に立ち弟のために流した涙が川に落ち、琥珀に姿を変えました。そしてお姉さんは悲しみのあまりポプラの樹に姿を変えてしまったのです。
川崎市多摩区 ふじえ眼科 院長 藤江敬子 プロフィールはこちら
2011/12/15 更新
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