4. 糖尿病網膜症の治療
1) 単純期
単純期はまだ治療は必要ありません。経過観察です。糖尿病のコントロールがよいと、出血が消えることもあります。前増殖期になると、いよいよ治療が必要になります。網膜の小さい血管がつぶれて、網膜に酸素がいきわたらない場所(虚血部分)が生じてきます。
2) レーザー光凝固術
まず初めの治療は、レーザー治療です。網膜にレーザー光線で人工的に弱いやけどを起こし、必要な酸素量を減らして虚血の網膜が生き延びることができるようにします。図1と図2を見てください。これは同じ患者さんのレーザーをする前と後の眼底写真です。
図1は治療の前で点状の出血や浸出物(白い斑点)があります。
図2はレーザー光凝固術の治療をした後の写真です。きれいに出血、浸出物がひき、この患者さんは今でもとても良い視力を保っています。
図1 治療前 | 図2 レーザー光凝固術後 |
3) 硝子体手術
網膜に浮腫が出て視力が低下した場合、網膜症がさらに進んで増殖期になり網膜剥離や新生血管緑内障といった合併症を起こした場合は、レーザー治療だけでは悪化をくいとめることはできません。このような患者さんには硝子体手術が効果があります。びっくりするかもしれませんが、目に3箇所穴をあけ、そこから器具を挿入し、目の中の「硝子体」を切り取ってしまう手術です。4) 最新の治療:抗血管新生療法
糖尿病網膜症で網膜が虚血になると、酸素不足で網膜が「苦しいよー」とサインをだします。そのサインを受け取って、「血管内皮増殖因子」というものが産生され、網膜や硝子体に新生血管が生まれます。この新生血管がくせもので、しばしば血管壁が破けて大出血を起こします。血管内皮増殖因子を抑える薬が開発され、糖尿病網膜症に使われるようになりました。これもまたびっくりなのですが、目に注射をして眼内に薬を注入します。まだ始まって数年の治療法ですが、これから大いに期待されるものです。
以上、3つの治療法についてお話しましたが、最後に・・・何よりも大切なのは、糖尿病網膜症を起こさないことです。網膜症を起こさなければ視力の低下もなく、大変な治療を受ける必要もありません。日頃の血糖値のコントロールに努める、定期的に眼底検査を受ける、糖尿病の患者さんに心からお願いします。
川崎市多摩区 ふじえ眼科 院長 藤江敬子 プロフィールはこちら
2010/04/15 更新
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