多摩区 中野島・登戸 ふじえ眼科

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2. 糖尿病の理解のために

 来月のコラムでは、「糖尿病網膜症」を取り上げる予定です。今月はその準備のために、糖尿病の話をします。私が、患者さんに伝えたいこと、それは 「糖尿病は、きちんと治療をし、血糖値をなるべく正常に保てば決して怖い病気ではない」、逆に「放置して、合併症が重症になったら、これほど怖い病気はない」この2点です。

1) 糖尿病とは?
私達の体は、血液中のブドウ糖からエネルギーをもらい働きます。血液中のブドウ糖濃度=血糖値は100mg/dl付近になるように保たれています。これがホメオスタシス(恒常性)です。
血糖値が下がると、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、アドレナリン、膵臓から分泌されるグルカゴンといったホルモンが働き血糖値をあげます。
では、血糖値を下げるホルモンは何でしょう。食後は血糖値が上がります、これを速やかに正常値まで下げてくれるのは、膵臓のランゲルハンス氏島から分泌されるインスリンです。血糖値を上げるホルモンは複数あるのに、下げてくれるホルモンはインスリンだけです。そしてこのインスリンが分泌されなくなる、分泌量が減る、効き目が弱くなることで血糖値が高くなるのが、糖尿病です。

2) 糖尿病の人は厚生労働省の平成19年度の調査で、糖尿病が強く疑われる人890万人、可能性を否定できない人1,320万人、合計2,210万人にのぼります。まさに、現代日本の国民病です。

3) 糖尿病は何故怖いのでしょう?
ずばり、合併症が起こり、これが生命を脅かします。
血糖値が高いままですと、血管の中を流れるブドウ糖が多くなります。すると、体の中の細い血管から目詰まりするのです。細い血管の代表が「目の網膜」「腎臓」「神経を栄養する血管」です。これらの血管が詰まり、三大合併症の網膜症、腎症、神経症を引き起こします。この三大合併症は、次回お話しします。

4) 糖尿病には2タイプがあります
 Ⅰ型糖尿病
 インスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス氏島β細胞の異常で、インスリンが分泌されず発症します。
 治療はインスリン注射と食事・運動療法です。
 Ⅱ型糖尿病
 インスリンの分泌量が少なくなったり、効き目が弱くなって起こります。治療は食事・運動療法、内服薬やインスリン注射です。

5) 糖尿病の症状は?
何の症状もなく、健康診断で血糖値の上昇で見つかる人もいます。代表的な症状は「口渇(のどが渇く)・多飲(水を多く飲む)・多尿(尿の量が多くなる)」です。また、疲れやすくなる、食べているのに体重が減るといった症状がでてきます。


糖尿病は、調子の良い時、悪い時がありますが、一生付き合っていく病気です。どうぞ、糖尿病の診断を受けた患者さんは、無理なく通院できる近くの病院・診療所でかかりつけのお医者さんを持ってください。
私は、今までに何人も重症の合併症の患者さんを診てきました。網膜症で失明してしまった人、腎症で人工透析を受ける人、神経症が悪化して足を切断した人。とても辛い思いです。
どうぞ、糖尿病の患者さんは自覚症状がなくても、忙しくても、定期的に通院して、検査と治療を受けてください。そして合併症を起こさないようにしてください。糖尿病にかかわる医師の切なる願いです。

こぼれ話し

最後に少しくだけた、こぼれ話をします。
1) 何故、「糖尿病」?
紀元前600年、インドの医師が、ある病人の尿に蟻が群がっているのを見つけたそうです。匂いを嗅いでみると、甘酸っぱい匂いがします。一説には、実際になめて、甘いことも確認したとか。
現代のように、血液検査もできず、診断技術もなかった時代、お医者さんは五感を働かせて診断にあたったのですね。

2) 20世紀になって、カナダのトロントのバンティングとベストという人がインスリンを発見します。彼らは後に、この功績でノーベル賞を受賞しました。インスリンが抽出され、注射薬として使えるようになり、今まで助けることができなかった患者さんを救えるようになりました。

川崎市多摩区 ふじえ眼科 院長 藤江敬子 プロフィールはこちら

2010/02/10 更新
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