179.網膜⑨:加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性症は50歳以上の約1%の有病率で、約70万人の患者さんがいます。加齢とともに多くなります。高齢化、生活の欧米化とともに、患者数が増加傾向で、日本人では男性に多い傾向があります。
1)症状は?
視力に影響する黄斑部の病変なので、視力低下、歪みを生じます。真ん中が見えない、物が小さく見えるといった訴えも多いです。
カレンダーの今日の日付、窓枠などを片目ずつで見てください。左右とも同じように見えますか?
2)原因は?
網膜を栄養する脈絡膜という組織があります。この脈絡膜に新生血管という異常な血管が生まれます。この新生血管は血液中の水分が血管外に漏れやすい、破れて出血を起こしやすいという厄介な性質があります。漏れ出した水分や血液が黄斑の下にたまると、視力低下、歪みを生じます。
3)診断は?
まず、患者さんの訴えが参考になります。眼底検査で黄斑部に浮腫や出血がないか調べ、そして網膜シリーズで何度も登場したOCT検査が活躍します。脈絡膜の新生血管、浮腫を調べます。4)治療は?
脈絡膜新生血管は、血管内皮増殖因子という物質で生成が促進されます。この血管内皮増殖因子を抑える薬を目の注射する治療が第一選択です。目に注射というと、驚かれるかもしれませんが、抗血管内皮増殖因子薬を硝子体内に注射します。現在はアイリーア、ルセンティス、バビースモ、ベオビュ、ビスダインといった薬が使用されています。
ここで問題なのは、この薬の薬価がとても高いこと、1回の治療では終わらず、複数回注射が必要になる場合があることで、患者さんの経済的負担が大きいことです。後発医薬品も出ましたがそれでも高価で、今後はさらに安価な薬、1回の注射で長く効く薬が出ることを願っています。
5)生活で気を付けることはありますか?
はっきりとした相関関係はありませんが、禁煙、緑黄色野菜の摂取、紫外線を避けるための帽子やサングラスの着用が推奨されています。(2025.1.8更新)