178.網膜⑧:黄斑前膜
黄斑部の病気、今月は黄斑前膜です。
このシリーズで述べていますが、黄斑部は物を見る機能が集約されています。その黄斑部の前に硝子体が変化した膜ができ、しかもそれが収縮して黄斑部を引っ張り、黄斑部の形状を変えてしまう病気です。
1)黄斑前膜とは?
多くは加齢によって起こります。また、硝子体手術後に起こる場合もあります。
眼球内には硝子体という、ゼリー状の物質があり、これが眼球の形状を保っています。黄斑部の前の硝子体が変化を起こし、膜を作ります。それだけなら悪さをしないのですが、この膜が接線方向に収縮すると、黄斑部の網膜を引っ張り形状が変化します。
黄斑部は本来、きれいなすり鉢型なのですが、OCTでみると引っ張られてすり鉢の形が盛り上がって見えます。
この変化は徐々に進み、視力低下や歪みで気づきます。
2)症状は?
初期は自覚症状はありません。実は70歳以上では20人に1人は黄斑前膜があるそうです。進行すると、歪み、視力低下を自覚します。
窓枠やカレンダーの日付などを片目で見てください。窓枠がまっすぐに見えない、カレンダーの今日の日付がかすむ、大きく見える、逆に小さく見えるといった症状はありませんか?私たちは、意外に両目で補い合い、片目の視力低下に気づくのが遅れることがあります。時々、片目で見るセルフチェックをお願いします。
3)診断
一番有用なものは、OCT検査です。近赤外線を用い、黄斑部の断面を描出します。上の写真の様に、膜で黄斑部が持ち上げられているのがわかります。4)治療・手術
視力が良く、本人の不自由さもない場合は、そのまま経過を見ます。視力低下、歪みがつらい場合は硝子体手術になります。眼球に小さな孔を開け、器具を挿入して物理的に膜を取り除きます。
ただ、膜を取り除いても、黄斑部の形状がすぐに戻るのではなく、数年単位で忍耐強く経過をみる必要があります。患者さんと手術を相談するときは、そのことをきちんと説明するようにしています。
(2024.12.11更新)