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176.網膜⑥:働き盛りは要注意、中心性漿液性網脈絡膜症

今月から、網膜の中でも特に視機能に大きく関与する、黄斑部の病気についてお話します。黄斑部は視機能の9割が集まる部位なので、黄斑部に病気が起きると視力低下や歪みを起こし、患者さんの見づらさを引き起こすことが多いのです。

黄斑部シリーズ第一回は、中心性漿液性網脈絡膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうみゃくらくまくしょう)。舌を噛みそうに長い名前の病気です。
網膜の中心=黄斑部に、漿液=さらさらした液が溜る、炎症性の病気という意味です。
30歳代から40歳代の男性に多く発症し、頻度は30歳以上で10万人に34人、男性は女性より3.5倍多いという統計があります。
自然に改善する方がほとんどですが、再発があるのが厄介な病気です。

1)原因とリスク因子

ストレスやステロイドの使用がリスク因子ですが、完全には解明されていません。
網膜を栄養する脈絡膜の血管異常があり、脈絡膜の血管の透過性亢進により黄斑部の直下に浸出液が溜り浮腫が起きるのではないかと考えられています。

2)症状

歪み、暗く見える、視力低下などです。矯正視力はきちんと1.2でるが、歪みがあるという患者さんも珍しくありません。

3)診断

正常な黄斑部活躍するのはOCT=光干渉断層計です。近赤外光を照射し、網膜から散乱して戻ってくる光から網膜の形状を見ることができます。
正常の黄斑部は、なだらかなすり鉢型をしていますが、中心性漿液性網脈絡膜症の患者さんの黄斑部は浸出液が溜って盛り上がっています。





中心性漿液性網脈絡膜症








4)治療

この病気は自然軽快が多いので、まずは様子を見ます。

網膜下液がなかなか引かない、再発を繰り返し視力低下があるという患者さんは治療の対象となります。

① レーザー治療
レーザーにより網膜と網膜下の色素上皮を接着させ、脈絡膜からの浸出液の漏出を遮断する方法です。ただ、漏れの部分が黄斑部の中心に近い場合はレーザーは危険でできません。

② 光線力学療法
レーザー治療が危険な症例、再発を繰り返す症例、下液が長期に引かない症例には低侵襲光線力学療法を行います。
光感受性物質のベルテポルフィンという物質を静脈注射し、その後、長波長(689nm)
のレーザー光を照射する方法です。
ベルテポルフィンは光感受性が強いので、治療後48時間は光を浴びないことが必要で、この治療を受ける際は、入院をして遮光した病室にいる、もしくは長袖、手袋、帽子マスクサングラスと完全装備で帰宅し2日間遮光した部屋で過ごすことが必要です。


(2024.10.9更新)


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