171.網膜①:その働きと、眼底検査
今月から網膜のシリーズになります。網膜は眼球の後部、内側に位置し、錐体細胞、杆体細胞が存在し、視神経を介し見た物の情報を脳に送ります。
とても大切な器官ですが、いろいろな病気も起こります。
今回は網膜の構造と働き、眼底検査でどのようなことがわかるかをお話します。
1)網膜の構造と働き
網膜は10層の細胞から成立します。神経細胞(9層)と網膜色素細胞です。
網膜には2種類の視細胞が働いています。錐体細胞は色や形を認識し脳に伝えます。杆体細胞は明暗を識別します。暗い部屋に入ってしばらくすると目が慣れて物が見えるのは、この杆体細胞の働きです。
2)眼底検査でわかること
人間ドックでは、40歳を過ぎると、眼底検査が加わることが多いようです。これは、40歳を過ぎると、網膜の病気や緑内障の確率が高くなるためです。人間ドックでは未散瞳眼底カメラで網膜の写真を撮り、これを眼科医が判定します。ただ、詳しく検査をするには、瞳孔を散大させる散瞳薬を使い、眼底を見ます。散瞳検査と言います。散瞳後は3時間くらいは眩しく見づらくなるので、車の運転をしないでください。
それでは、眼底検査でどのようなことを調べるのかお話します。
①視神経の異常
前回までは、緑内障のシリーズでした。眼底検査では視神経乳頭陥凹の拡大、視神経繊維束欠損で緑内障を見つけ、治療を開始することができます。
②動脈硬化の有無
網膜は血管を直接見ることができます。動脈硬化がある場合、動脈は白線化といい白っぽく見えるとともに口径が狭くなる変化が起こります。硬化が進むと、静脈との交叉部で静脈を押しつぶした変化がでることもあります。
③眼底出血
眼底出血には様々な原因があります。これは、来月以降、順に病気を紹介します。
網膜静脈閉塞症、正常眼圧緑内障を疑わせる視神経乳頭出血、糖尿病網膜症などです。
④網膜裂孔と網膜剝離
白い壁を見ると髪の毛のようなものが見える、墨を流したように見える、患者さんによっていろいろですが、こうした症状を「蚊が飛んでいるように見える」、飛蚊症と呼びます。ほとんどが加齢による硝子体の濁りによるものです。私も髪の毛のようなものが上下左右に動いて見え、他の眼科の先生に診てもらい「歳だ」で終わりました。
それならよいのですが、まれに網膜の周辺に孔が開いて起こる、さらにそこから網膜剥離を起こすケースがあります。
急に飛蚊症が出た場合は是非、眼底検査を受けてください。その時は前述のように、車はおいて受診をお願いします。
⑤黄斑部の異常
黄斑部はものを見る機能の9割が集中した部位です。ここに起こる病気が加齢黄斑変性症、黄斑前膜、黄斑円孔、黄斑浮腫です。患者さんから、歪みがある、視野の真ん中が暗く感じる、視力が急激に落ちた等の症状を聞くと私たちは黄斑部の病気を考えます。
今回取り上げた症状や病気はこれから順に書いていきます。
(2024.5.7更新)