多摩区 中野島・登戸 ふじえ眼科

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89.加齢黄斑変性症の治療

先月は加齢黄斑変性症について話しました。今月はその治療法について話します。
今から20年前、治療法はありませんでした。加齢黄斑変性症と診断がついても、患者さんには「治療法はありません」とお話しするしかなかったのです。けれども今は完全に治るとはいかないまでも、進行をくいとめる有効な治療法がいくつかあります。
光線力学療法、VEGF阻害剤療法、そして話題のiPS細胞治療について書きます。

1) 光線力学療法

 光に反応する特殊な薬(ビスダイン)を静脈注射します。ビスダインは加齢黄斑変性症の原因となる悪い新生血管に集まる性質があります。ビスダインが新生血管に集まったところで特殊な波長のレーザー光線を照射し、選択的に新生血管をつぶす治療です。
 この治療の注意点は、ビスダインは非常に光に過敏なため、治療後3日ほど光を浴びないことが必要です。術後、暗くした部屋で入院してもらうか、日帰りの場合は長袖、帽子、マスク、サングラス、肌を露出させないようにして帰宅します。

2) VEGF阻害剤療法

 血管には血管内皮増殖因子(VEGF)という物質があり、血管を増殖させます。加齢黄斑変性症の原因になるのは、網膜を栄養する脈絡膜に異常にできた新生血管ですので、VEGF阻害剤を硝子体内に注射をし、原因の新生血管を消退させる治療法です。
 一部、効果のない患者さんもいますが、とても有効な治療法で、現在はこの治療法が主体となりました。ただ、難点は使用する薬剤の薬価がとても高いため、お金がかかることです。

3) iPS細胞治療

 これはまだ研究途中ですが、国内で何例か行われています。iPS細胞はいろいろな細胞に分化しうる細胞です。2014年に患者さんの皮膚の細胞からiPS細胞を作り、さらに網膜色素上皮細胞シートを作り移植をしました。この治験では億単位のお金がかかったため、2017年3月、他人のiPS細胞から作ったものを移植する治験が行われました。この方法ですと、網膜色素上皮細胞シートをあらかじめ複数作っておき、何人かの患者さんに移植することができ、経費を少なくできます。まだ研究途中ではありますが、今後の結果が待たれます。


2017/5/10更新

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