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83.糖尿病網膜症

 現在、日本で糖尿病の治療を受けている患者さんは約316万人います。しかし、糖尿病が疑われる予備軍も含めると患者数は約900万人になります。

1) 糖尿病はどんな病気?

 私たちの体には恒常性というものがあります。いろいろなホルモンが働いて血液中の血糖値は100mg/dlになるよう調整されています。このバランスが崩れて血糖値が上がってしまうのが糖尿病です。
 血糖値が上がらないように働くのが、すい臓で作られるインシュリンというホルモンです。このインシュリンが体内で作られなくなる、あるいは量が不足したり、働きが低下すると血糖値が高くなってしまうのです。

2) 三大合併症

 血糖値が高い血液が血管の中を流れると、体の中の小さい血管が障害を受けつぶれてしまいます。この微小血管の障害によりひきおこされるのが、三大合併症「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」です。近いうちに、糖尿病のコラムも書く予定ですので、今回は糖尿病網膜症のみお話しします。

3) 糖尿病網膜症はどんな病気?

 網膜は微小血管で栄養されています。この血流が悪くなると網膜は酸素不足におちいり、酸素不足を補うために新生血管が出来てきます。この新生血管は大変もろく、破けやすく眼底出血を起こします。
 糖尿病網膜症はその進行段階で、単純性網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症の三期に分類されます。
①単純網膜症
網膜症の最初の段階です。微小血管の一部が瘤のように腫れる毛細血管瘤、小さな点状出血があらわれます。この時点では「見え辛い」といった自覚症状はありません。まだ糖尿病網膜症の治療はせず、血糖コントロールを改善してもらえば軽快します。

②増殖前網膜症
糖尿病網膜症 血管が閉塞し、網膜の中に、全く血液が流れない「虚血部分」が生じた段階です。眼底検査では、しみ状出血、白い綿のように見える軟性白斑という症状が現れます。この時点でも自覚症状のない方が大半です。写真を見てください。小さい出血と白い綿のような変化が見られます。この症状を放置すると視力低下につながるので、レーザー光凝固術が必要になります。
 レーザー光凝固術は網膜の虚血部分にレーザー光を照射し、熱で網膜を凝固して、虚血部分の酸素の必要量を減らす手技です。この治療をしっかり受けておくと、次の増殖網膜症への進行を防ぐことができます。



③増殖網膜症
糖尿病網膜症 虚血部分が多くなり、その虚血部分に酸素を送ろうと新生血管が作られる段階です。新生血管というと良いもののように聞こえますが、実はこの血管は大変もろく破けやすく、大出血を起こします。眼底出血が広がると視力低下が起こります。写真は、増殖網膜症の方のものです。広い範囲に眼底出血が起こり視力低下で受診しました。
 治療は同じようにレーザー光凝固術、さらに硝子体手術が必要になる場合もあります。





4) 定期的な眼底検査がなによりも大切です

 お話しした通り、増殖網膜症までは自覚症状が出ない人がほとんどです。第二期の増殖前網膜症でレーザー治療を受けられれば良好な視力を保てる人が多いのですが、増殖網膜症まで進んでしまうと治療がうまくいっても、視力が回復しないことも多いのです。糖尿病網膜症は、糖尿病と診断されてから何年もの月日を経て、徐々に進行します。視力低下の症状がなくても半年に1回の眼底検査を受けてください。第二期の増殖前網膜症で早めのレーザー光凝固を受けていただけば、視力を保つことが可能だからです。


2016/11/2更新

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